【コンサルティング】財務デューデリジェンス(財務調査)

財務調査について、実施したことはありますか?

 

決算書の数値については、ほとんどの場合、今の実際の価値を示していません。

理由は、大きく2点あり、

①決算書が今の価値を示すためのものではなく、企業が継続することを前提に利益計算をしているため

②税務上の申告のために決算が作られているため

です。

 

①企業が継続することを前提に利益計算している

企業は事業を継続することを前提としています。(1年で会社をたたむ予定で事業を行う人はいませんよね)

そのため、一番わかりやすいものでいうと、「固定資産の減価償却」という考え方があります。

減価償却とは、固定資産の購入費用を使用可能期間にわたって、分割して費用計上する会計処理のことです。

説明を簡略化させるために、定額法という処理で話をすると、

10年使える備品を1,000,000円で購入した場合、毎年経費となる金額は100,000円になります。

(1,000,000円÷10年)

 

購入した年にすべてを経費とするわけではなく、利用可能な期間で経費を按分するようなイメージです。

 

しかし、ここでいう10年という計算はあくまでも税務上定められた期間(耐用年数一覧表)で計算するものであり

実際の使用可能期間で計算することはほとんどありません。

 

また、例えば、3年たったとすると、決算書には700,000円(100,000円×3年分を控除)として計上されていることになりますが、

700,000円で売却できるかというとまずそのようなことはありません。

おそらく実際売ろうとすると、ほとんどがそれ以下の値段でしか売却することができません。

 

あくまでも利益計算を前提として、経費を分割しているだけなので、

帳簿に計上されている金額が実際の価値とは限らないというのは、こういった意味です。

 

②税務上の申告のために決算が作られている

上記の①でも類似した話ではありますが、

ここで行っているのは、ほとんどの会社が税務申告を前提に決算書を作成しているという点です。

税務申告上赤字が多い場合には、

例えば、減価償却を実施せず、赤字を少なく見せる方法を行っている会社も多くあります。

(会計上は適正な利益計算のため、減価償却の計上は必要なのですが、

税務上は減価償却を行った場合に経費として認めるとなっており、減価償却を実施することが必須ではありません。)

そのため、例えば赤字が続いている法人の場合、

先ほどの例を前提とすると、3年経ったとしても、一度も経費として減価償却を実施していない場合には、

決算書には1,000,000円として計上されていることになります。

 

同じ資産であっても、同じ金額とならないことになります。

この場合には、実際の価値とはさらに大きく乖離してしまうこととなります。

 

また、税務上経費として取り扱いができない分野(例えば、退職給付引当金)や

税務上経費として取り扱うことが微妙な分野(回収が長期間遅れてしまっている売掛金の取り崩し)などについては、

計上されないケースが多く、

その場合、実際の会社の価値とは異なることとなるケースが非常に多いです。

 

財務デューデリジェンス(財務調査)の必要性

そのため財務ディーデリジェンスが必要となります。

ただし、すべての法人が必要となるかというとそうではありません。

財務デューデリジェンスが必要となる多くの場合は、外部の誰かに決算書を開示する必要がある場合に実施されます。

例えば、M&A(買い手が知りたい場合)や事業再生(銀行やファンドが知りたい場合)などに実施されます。

 

M&Aのケースを取って話をすると、

会社を買いたいと言った会社側からすると、決算書が本当に正しい価値を示しているのかどうかは

購入価格を決定するうえで、非常に重要な情報となります。

しかし、上記①②のようなことを理由に、

仮に適切に税務申告が実施されていたとしても、決算書の数値が実際の価値を示しているわけではないということとなります。

決算書の数値が正しいと思って、価格を決定し購入したが、その後ふたを開けてみたら資産はボロボロ。

売掛金として計上されていたものは、多くが回収することのできない売掛金であった場合には、

本来払うべきでないお金を多く払ってしまうこととなります。

全てを見抜くことは難しいですが、しっかりと調査すれば、防げるリスクがあります。

 

また、経営改善の場合には、財務デューデリジェンスが実施されることが一般的です。

それは、経営改善はほとんどの場合に、金融機関の同意なしには事業再生ができないからです。

経営改善というと、会社を立て直して、もう一度会社が利益を出せる体制を作り直すことを言いますが、

ほとんどの場合は資金がなくなって事業を継続することができないことを言います。

要は会社はお金が継続的に回るのであれば、事業を継続することができるということです。

お金が足りなくなる場合のほとんどは、事業の利益(収支差額)から得られる額で、借入金の返済ができなくなるケースです。

そのため、金融機関からの支援が必須となります。

 

財務デューデリジェンスの手続き

財務ディーデリジェンスについては、外部の第三者が調査を行うことが一般的です。

財務デューデリジェンスは会計基準(事業が継続することを前提)とは異なり、

今の価値はいくらくらいあるのかということを前提に調査が実施されます。

 

ここでいう財務デューデリジェンスについても複数の考え方があり、

今後経営するうえでの価値はどれくらいあるのか(実態価値)、

今解散するとすればいくらなのか(清算価値)、

といったように、何が知りたい情報かによって、手続きが異なります。

調査の前提としては、粉飾が行われていることもあり得ますので、粉飾決算が行われていないかも含めて調査を行うこととなります。

 

調査内容をざっくり説明すると、

①粉飾はないか

②回収できない債権は存在しないか

③固定資産は実際の価値を示しているか

④帳簿に計上されているが実際にはない資産はないか

⑤計上漏れの未払はないか

⑥退職金などの準備金(退職給付引当金)は計上されているか

⑦訴訟など将来大きな損失が生じる可能性はないか

このあたりが、一般的な調査で必ずと言っていいほど見る視点になります。

 

気になる会社があれば、弊社で調査を行うことが可能です。

 

 

 

参考

善意の考え方から言えば、税理士などの専門家が付いているのに、粉飾決算なんて起きることはあり得ないんじゃないか?

と思う方もいらっしゃるかと思いますが、残念ながら、そうではないことがよくあります。

 

私の経験から言っても、事業再生に関しては、40件以上やりましたが、半数以上は粉飾決算が行われているのではないかという感覚です。

理由は、それぞれに異なりますが、

例えば、取引先が大きな会社で決算書の提出が求められる、

赤字の会社とは取引しないといわれている、

外部の審査団体に提出が必要、

赤字になるとお金が借りれなくなる、といった内容がほとんどです。

 

驚くことかもしれませんが、

2020年に国税庁が発表した情報によると一般企業の66.1%赤字決算となっています。

それでも8年連続で減少傾向というのですから、企業の2/3は赤字ということです。

節税のために赤字にしている法人もありますし、無理やり黒字にしている法人もあるので、

正確な数値とは言えませんが、これくらい赤字の法人が多いということです。

 

 

 

 

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