個人の節税対策(小規模企業共済編)

個人の節税対策

今年もすでに半分以上が過ぎました。

そろそろ個人所得税の節税対策の検討が必要な時期になりましたので、代表的な節税対策の1つである「小規模企業共済」をご説明したいと思います。

 

小規模企業共済とは

小規模企業共済とは、小規模企業共済法に基づいて昭和40年に発足した制度です。

サラリーマンには勤務先によっては、退職金制度がありますが、この小規模企業共済は、自営業者等の方にとって退職金のような役割を果たします。一定の加入要件を満たした人などが掛金を支払っていれば、事業を終了、引退するなどしたとき、まとまったお金が払い戻されます。

現在は、国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構によって運営されていて、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員が加入することができます。

 

小規模企業共済の加入資格

小規模企業共済制度には、個人事業主や小規模企業の経営者または役員が加入できる制度で、次のいずれかに該当する時に加入することができますが、配偶者等の事業専従者や学業を本業とする全日制高校生、生命保険外務員などは加入することができません。

1. 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員

2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員

3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員

4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員

5. 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員

 

小規模企業共済の加入プラン

掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択することができます。

支払った掛金の全額が所得控除の対象となりますので、たとえば掛金7万円であれば、最高84万円の所得控除を受けることができます。

また、前払いした掛金についても向こう1年以内のものであれば控除することができ、最高で168万円の所得控除を受けることができます。

よって、最大で24ヶ月分の控除が同じ年に行えることになるのです。

特に「12月に前納をしたい」という方が多いと思いますが、12月の前納を行うにはいつまでに申請を行えばいいのでしょうか?。

答えは11月20日です。

前納の申請は前月の20日までと決まっているため、12月に前納を行いたい場合には、11月20日までに申請を行う必要があるのです。

 

コロナ禍で活用したい!「貸付制度」

小規模企業共済制度に加入していると、今までの掛金の一定割合まで貸付を受けることができます。

新型コロナウイルス感染症に関しては長期戦の様相も見せ始め、今後どのように経営戦略、財務戦略を立てていけばよいのか頭を悩ませている経営者の皆さまも多いことと思います。

経営者としては、今後ますます売上の減少やひっ迫する資金繰りに対して、助成金や補助金だけでなくあらゆる手段を講じなければならない可能性があります。

その手段のひとつとして、知っておきたいのが小規模企業共済の貸付制度です。

小規模企業共済の貸付制度は、いざという時に迅速に事業資金の借り入れができる便利な制度です。

 

小規模企業共済のメリット

(1)掛金全額が所得控除できる

小規模企業共済に加入して掛金を支払えば、確定申告の際にその全額を課税対象所得から控除することができるため、高い節税効果があります。

なお、小規模企業共済掛金控除を受けられるものとしては、他に個人型年金加入者掛金(いわゆるiDeco)があります。

どの制度に加入するかは、事業内容・状況によって異なりますので、税理士に相談するとよいでしょう。

所得が高ければ高いほど節税効果が期待できるため、たとえば課税される所得金額が200万円である場合、掛金月額が7万円であれば、129,400円も節税することができます。

(2)掛金は増減可能

掛金は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択することができます。

また、加入後も自由に増額・減額が可能です。経営悪化等の理由で掛金が支払えない場合には、一時期的に支払いを止める「掛け止め」もできます。

(3)共済金は、一括・分割の選択可能

共済金は、退職・廃業時に受け取ることができます。

満期や満額というしくみはありません。

共済金の受取は「一括」「分割」「一括と分割の併用」から選択することができます。

一括受取を選択すると「退職所得」扱いになり、分割受取を選択すると「雑所得」扱いになります。「事業所得」などに比べて税負担が大幅に軽減されます。

(4)退職金代わりになる

6カ月以上積み立てると、廃業した場合に共済金を受け取ることができ、退職金代わりにすることができます。

また、12カ月以上積み立てると、解約手当金を受け取ることもできます。

共済金を受け取るためには、個人事業の廃業届、印鑑登録証明書(発行後3カ月以内の原本)、マイナンバー確認書類などのほか、共済金等請求書、退職所得申告書、預金口座振替解約申出書兼委託団体払解約申出書などの書類が必要です。

(5)貸付制度が利用できる

加入者は、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を低金利で利用することができます。

即日貸付けも可能、さまざまな種類の貸付があります。

・一般貸付け(事業資金)
・緊急経営安定貸付け
・傷病災害時貸付け(病気の時など)
・福祉対応貸付け
・創業転業時・新規事業展開等貸付け
・事業承継貸付け
・廃業準備貸付け
一般貸付制度は、もしもの時に迅速に事業資金を借り入れできる便利な制度です。

 

一般貸付制度の借り入れの限度額

掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円以上2,000万円以内(5万円単位)で借り入れをすることができます。

現在借り入れをしていない場合には、中小企業基盤整備機構から送られてくる最新の「貸付限度額のお知らせ」を確認してください。

 

小規模企業共済のデメリット

節税効果の高く、便利な貸付制度のある小規模企業共済ですが、いくつかの注意点もあります。

加入を検討する際には、このような注意点を理解しておきましょう。

(1)12カ月未満の掛捨てリスク

共済金は、個人事業主を廃業したり法人が解散したり解約したりした時に受け取ることができますが、掛金納付月数が6カ月未満の場合は、一部の共済金、共済金は受け取ることができ、12カ月未満の場合は、準共済金(法人の解散、病気、怪我以外の理由により、または65歳未満で役員を退任した場合)、解約手当金(任意解約や、掛金を12カ月以上滞納した時の機構解約)の場合には受け取ることができません。

ただし、災害など契約者の責任ではない理由(やむを得ない理由)により生じた掛金の滞納については、共済契約を継続することができます。

(2)加入期間20年未満は元本割れ

掛金納付月数が、240カ月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛金合計額を下回ってしまい、元本割れしてしまいます。

また、加入期間が240カ月以上でも、途中で掛金を増額したり減額したりした場合で掛金区分ごとの掛金納付月数が240カ月を下回ったときは、任意解約した場合に受け取れる解約手当金が掛金合計額を下回ってしまうこともあります。

20年以上加入しなければ、かえって損してしまうこともあるので、目先の節税効果にとらわれずに、加入する際には十分な検討が必要です。

(3)受取時には課税される

積立時の掛金は全額が控除額にできるので節税することができますが、受取時には退職所得または雑所得として課税されることになります。

つまり小規模企業共済は、「課税を先送りにする制度」だということもできます。

ただし、退職所得はほかの所得と分離されて計算され、税制上重税とならないよう特別の軽減を図ることになっています。

具体的には、「(退職金-控除額)×1/2」が所得となり、この所得に応じて納税額を計算します。

一定額が控除されるほか、1/2となるので、その分税負担が軽減されます。

 

小規模企業共済加入の手続き

小規模企業共済への加入手続きは、加入する方の立場などによって手続きが異なりますが、加入手続き自体は、中小機構が業務委託契約を結んでいる団体または金融機関の窓口で行なうことができます。

個人事業主の場合には、確定申告書の控え(税務署受付印があるものや受信通知があるもの)が必要であり、法人(株式会社など)の役員の場合の場合には、履歴事項全部証明書(商業・法人登記簿謄本、交付後三ヶ月以内のもの)など役員登記がされていることが確認できる書類が必要となるので、あらかじめ用意しておきましょう。

 

まとめ

以上、小規模企業共済についてご紹介しました。

老後の蓄えができ、節税メリットもある小規模企業共済制度ですが、12カ月未満の場合の場合には、掛捨てとなってしまいますし加入期間20年未満は元本割れとなってしまうなどのデメリットもありますので、加入する際には20年以上掛金を払うことができるかについて、弊事務所などに相談して慎重に検討することをおすすめします。

 

 

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