企業診断については、
大きく分けると業界分析と自社の経営分析などが重要と考えられます。
業界の動向について
業界分析については、以下のような資料より業界について読み解くことができます。
主な業界分析の資料名と出所先
業種 | 資料名 | 出所 |
全業種 | 地域経済報告(さくらリポート) | 日本銀行 |
全業種 | 中小企業景況調査 | 中小企業基盤整備機構 |
全業種 | 工業統計 産業編 | 経済産業省 |
製造・卸業 | ホームページ | 電子情報技術産業協会 |
小売業 | 商業動態統計調査 | 経済産業省 |
飲食業 | 外食産業市場動向調査 | 日本フードサービス協会 |
業界の動向を知ったとしても、商品や製品が異なれば必ずしも業界動向と同じ動きをするとは、限りません。
ただし、自社を取り巻く環境がどういった環境にあるのかを把握することは自社の立ち位置を決めるうえで重要な情報となり得ます。
業界動向と自社の分析
業界動向を調べると、自社を取り巻く環境がどのように変化しているのかを把握することが可能となります。
そのため、例えば、過去から現在そして将来にわたって成長産業であるのか、停滞産業であるのか、衰退産業であるのかなどを
把握することができます。
たとえば、介護業界でいうと、高齢化はますます進み、利用者(顧客)はこれからまだまだ増えていくことが予想されています。
そういった意味でいうと、介護事業は成長産業といえます。
※成長産業だから利益が出る、という話ではありません。
一方で、書店や印刷業などは、これからますますIT化が進み、電子書籍や紙ではなく電子データでのやり取りが増えていくことが想定されます。
そういった意味でいうと、書店や印刷業は衰退産業といえます。
※衰退産業だから利益が出ない、という話ではありません。
自社を取り巻く産業が全体として、成長産業であるのか衰退産業であるのかを把握することで、
自社がこれから先もこの産業のみで勝負すべきなのか、他の産業へも展開していく方が良さそうなのかを把握することが可能となります。
これが分かれば、自社の売り上げが全体としてどのような方向に進んでいく可能性が高いのかを把握することが可能となります。
原価率について
業界分析をするうえで、参考になる数値としては、原価率も存在します。
自社が同業他社と比較して、原価率がどのような状況にあるのかを把握することができます。
原価率については、ビジネスモデルによっても大きく異なるため、全業種を参考としても全く意味のある数値とは言えません。
当社が高単価な材料を使い、高単価な商品を提供しているのであれば、原価率にも影響を与えますし、逆でも同じように原価率に影響を与えます。
あくまでも業界の参考数値として、把握することが可能です。
企業の求人状況
近年全業種で求人倍率が高くなり、どの会社も人を採用することができないという声を聞きます。
この点、厚生労働省が発表する「一般職業紹介状況」などでは、業種ごとの求人倍率などを把握することが可能となります。
こちらの情報も有益な情報だと感じますが、地域差が大きく出る求人情報については、最寄りのハローワークもしくは求人会社などから
情報を収集する方が、よりタイムリーに正確な情報を収集できると考えられます。
自社の分析
上記の業界分析を行ったうえで、自社がどのようなビジネスモデルを展開しているのかを再確認することが望ましいと考えられます。
多くの法人で実施していない内容ですが、ビジネスモデルとして、
売上先、売上比率や仕入先、紹介ルートなど毎に、自社がどういった取引先とビジネスを実施しているのかを可視化することはとても重要です。
また、近隣の同業他社と自社を比較することで、自社の優位性や他社の優位性などを明確化し、自社の問題点を把握することができるようになります。
自社の分析方法は多岐に渡り、経営学などのテキストで紹介される手法なども多数存在しますが、
基本は自社がどのような優位性と売上、利益の拡大チャンスがあるのかどうかを分析するために利用できれば、
中小企業であれば、十分であると感じます。
ただし、全体的な分析をしたとしても結果としては、自社がどう経営戦略を立てるのか、が一番重要です。
上記の記載した通り、衰退産業であっても伸びていく会社はありますし、逆に成長産業であっても倒産してしまう会社はあります。
自社の悪い部分には、あまり詮索したくないのが、社長です。
自信があるから事業を起こしているので当たり前です。
企業分析などの際には、コンサルタントなどの外部の業者を活用して、第三者の眼で確認してもらう方が、
結果として中立的に分析することが可能になると考えられます。
以下のテキストは、分析手法や情報収集などうまくまとまったテキストかと思います。
(固めのテキストに感じる部分もあるので、好みは分かれるテキストではありますが、参考まで)
「学部生のための企業分析テキスト」髙橋 聡・福川裕徳・三浦 敬[編著]