贈与税の配偶者控除について
贈与税の配偶者控除とは
配偶者が居住用不動産の購入またはその建築資金を贈与されたときに、贈与された金額から2,000万円まで控除することができるという制度です。
贈与税の基礎控除とあわせると年間2,110万円まで、贈与税がかからないことになります。
(ただし、不動産取得税、登録免許税がかかります)
贈与税の配偶者控除の適用要件
・婚姻期間が20年以上であること
・今までに配偶者控除を受けていないこと(同一夫婦間で1度だけ)
・贈与財産は、居住用不動産又は、居住用不動産の取得資金のいずれかであること
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与された(又は取得した)居住用不動産を居住の用に供し、その後も引き続き居住する見込であること
・贈与税の申告をすること
贈与税の配偶者控除の手続
次の書類を添付して、贈与税の申告をすることが必要です。
・財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本
・財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
・居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、上記の書類のほかに、その居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)が必要となります。(参考:国税庁)
贈与税の申告期限は、原則、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までとなります。
住宅用不動産と取得資金贈与のどちらが有利?
居住用不動産の贈与の方が有利です。
なぜなら、贈与する不動産の価格は、相続税評価額となりますので、土地の場合は路線価(公示価格の8割)、建物の場合は固定資産税評価額(建築代金の5~7割)に対しての贈与税の課税で済むからです。
しかし、居住用不動産を取得後すぐ贈与すると、取得資金の贈与とみなされる場合がありますので、注意が必要です。
特例適用のメリット
相続税対策としては
贈与税の配偶者控除を適用した贈与は、相続開始前3年以内の生前贈与加算の対象となりません。たとえ、贈与をした年に、相続開始となってしまった場合でも、特例の適用が認められることになります。
譲渡税対策としては
この特例を適用して、居住用財産を夫婦の共有財産にしておくと、将来自宅を売却する際に、「居住用財産の売却益に対する3,000万円の特別控除という特例を夫婦で適用することができるため、合計で6,000万の売却益まで税金がかからなくなります。3,000万円の特別控除の特例は、土地の場合、家屋とともに譲渡する土地に限られるため、居住用不動産を配偶者に贈与する時には、家屋部分も贈与しておくことが必要になります。
特例適用のデメリット
大きなデメリットは、マイホームを贈与してもらった妻に対して、不動産取得税(地方税)や登録免許税(国税)がかかるということです。
不動産取得税は、相続の場合はかからないのですが、贈与の場合はかかります。
令和6年3月31日までに取得した不動産の場合、土地も住宅も、固定資産税評価額の3%の税率で課されます。ただし、一定要件を満たす土地や住宅の場合、軽減措置が受けられます。
名義変更などの登記の際にかかる登録免許税も、相続の場合は固定資産税評価額の0.4%ですが、贈与の場合は固定資産税評価額の2%の負担となります。
登記の際に司法書士などに手続きを依頼した場合は、司法書士報酬などもかかってきます。
したがって、固定資産税評価額にもよりますが、不動産取得税と登録免許税、その他、手続き費用などで合計100万円前後の負担が必要になるケースもあります。
さらに、マイホームの一部を取得した妻に対しては、その後、毎年、固定資産税や都市計画税の請求が来ることになります。
それから、もう一つのデメリットとしては、贈与してもらった妻が夫より先に死んでしまうと、贈与した意味がなくなってしまいます。
せっかくマイホームの一部または全部を贈与して妻名義に変えても、妻が先に死んでしまうと、夫が相続をして、また夫名義に戻すことになってしまうからです(この場合、妻の持ち分を子どもが相続するのであれば、問題はありません)。
相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは?
次に、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)を取り上げます。
この制度は、配偶者の相続税負担を大きく引き下げてくれます。
配偶者は、「法定相続分相当額」か「1億6,000万円」のどちらか多いほうの金額までの相続であれば、相続税はかかりません。
例えば、夫が100億円の財産を残して死んだとき、法定相続人が妻と2人の子どもだった場合、法定相続分は妻が2分の1、2人の子どもはそれぞれ4分の1ずつとなります。
したがって、妻は夫の遺産100億円の2分の1である50億円以内の相続あれば、相続税はかからないのです。
また、夫の財産が2億円だった場合は、2分の1である1億円を超えても、1億6,000万円以内の相続なら、妻には相続税はかからないということです。
それから、マイホームの土地部分については、「小規模宅地等の特例」がある関係で、330㎡までの部分については評価額を80%減額してもらえる制度があります。妻がマイホームにそのまま住み続ける場合は、相続財産としての評価額も大きく下げてもらえるわけです。
そう考えると、一般的な世帯で、夫が亡くなったときの相続財産が高額にならない妻は、相続税を心配する必要はないですし、高額な相続財産だったとしても法定相続分の範囲内の相続に抑えておけば、相続税はかからないわけです。
ただし、配偶者の税額軽減によって妻に対して相続税がかからなくても、将来、妻が亡くなったとき(二次相続)に、子どもたちの相続税負担が重くなってしまう可能性が考えられます。
おわりに
相続財産が高額になりそうな人は、贈与税の配偶者控除や子どもたちへの贈与(相続時精算課税制度の利用など)も含めて、早くから有効な方法を探っていくのがベターでしょう。
個々の事情によって有利不利が変わってきますので、詳しくは私共事務所にご相談ください。
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