代表者貸付金について

代表者貸付金について

同族会社の場合,様々な理由から代表者へ金銭を貸し付けたり,逆に,代表者から金銭を借り入れたりすることがありますが,貸主と借主が実質的に同一人物ですので誰からも催促されず,故に長期間放置されがちです。

しかし,期間や利率,返済方法などの条件を決めないまま長期間放置しますと,実務上や課税上トラブルになる場合があります。

 

実務上の問題点

実務上ですが,融資を受ける時,又は受けた後に金融機関から決算書や試算表の開示を求められますが,法人から代表者へ多額の貸付金がある場合,問題となることがあります。新たな融資が認められなかったり,融資金の目的外利用として一括返済を求められることもあります。

金融機関としては本来,代表者個人の信用審査で融資を受けなければならないのに,なんらかの理由で個人では融資を受けることが出来ない為,迂回融資を行ったと見られるわけです。

ですから,金融機関からの融資を検討する場合は,代表者への貸付金の処理も含めて検討することが重要です。

 

税務上の問題点

まず,代表者への貸付金ですが,無利息又は通常の金利よりも低金利で貸し付けた場合には,原則として,通常支払うべき利息相当額と実際に支払っている利息との差額が,代表者への役員報酬又は役員賞与として所得税が課税されます。

この場合における通常の金利とは,法人が他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には,その借入金の利率により,その他の場合には,貸し付けを行った日の属する年の利子税特例基準割合(租税特別措置法第93条第2項(利子税の割合の特例))による利率をいいます。

ちなみに令和4年の利子税特例基準割合は0.9%です。

貸し付けた法人側の税務上の取扱いですが,原則として,代表者に対する所得税の取扱いに準ずることになります。

すなわち,代表者に対し所得税課税される場合には法人側は受取利息と役員報酬(又は役員賞与)を認識し,所得税課税されない場合には法人側も課税上の問題無しという取扱いになります。法人側で役員報酬(又は役員賞与)を認識した場合には法人税の計算上損金とならない可能性が高く,その場合は個人に所得税が,法人に法人税が課税され,ダブルパンチとなります。

次に,代表者からの借入金ですが,こちらは貸付金とは異なり,無利息又は通常の金利よりも低金利で借り入れた場合であっても,実務的には課税上問題となることは少ないです。借り入れた法人は,支払うべき利息とそれが免除された債務免除益が相殺され損益が発生しませんし,貸し付けた代表者は,利息を受け取っていませんので原則として所得税課税はありません。

このように,法人税及び所得税ではそれほど問題とならない代表者からの無利息融資ですが,相続の場面においては問題となる場合があります。

 

相続上の問題点

代表者が法人へ資金を貸し付けたまま相続が発生しますと,その貸し付けた金額のうち未回収部分は貸付金として相続税の課税対象となります。法人がきちんと返済できる場合には貸付金として相続税の課税対象となることは何ら問題ありませんが,回収可能性が低いにもかかわらず相続税が課税されてしまうと,相続人は自己の預金から納税しなければならないという問題が生じます。

よって,普段はあまり課税上の問題を生じさせない代表者からの借入金であっても,特に多額にある場合は何もしないまま放置しておきますと思わぬ課税を招くことがありますので,早めに対処しておく必要があります。

 

終わりに

会社を経営していますと色々なことが生じ,同族会社とその代表者間で金銭の貸し借りをせざるを得ない場面というのは必然的に生じてしまいますが,少しずつでも良いので計画的に返済し,可能な限り互いの債権債務を解消しておくことが賢明と思われます。

 

 

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