家を売却した場合に、税金がかかるの?

不動産を売却すると…

先日、「ずいぶん前に相続で取得した実家を、今月売却することになったので確定申告が必要か相談したい」とご連絡を頂きました。

そのお客様は、十数年前に実家を相続したのですが、居住することなくほったらかしにしていたそうです。

この度、この古民家を改修して使いたいという購入希望者が現れたので、現在売却する方向で動かれているそうです。

このお客様の場合は居住用不動産でもなく、買替るわけでもないので、税額控除等の論点は無いのですが、

これが居住用不動産の場合はいろいろ論点が発生します。

家を売却して利益が出ると税金がかかります。

しかし「税金」と聞くと難しい印象があり「家を売却したら税金はいくらかかるの?」といった不安を持っている人は多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、家を売却で発生する譲渡所得税の計算方法、税額控除等を解説していきます。

 

譲渡所得にかかる所得税、住民税、復興特別所得税

家を売ったときの利益を譲渡所得といい、その譲渡所得に対して所得税、住民税、復興特別所得税がかかります。

逆に言うと譲渡所得がなければこれら3つの税金はかかりません。家を売却したら必ず税金がかかる、というわけではないのです。

一般的には下記のようなケースでは譲渡所得が出ないのでこれらの税金は発生しません。

売却で税金がかからないケース

・家を購入した価格より安く売った場合
・家売却出た譲渡所得が3000万円以下の場合 ※3000万円特例控除を利用
・住み替えのために家を売却した場合 ※買い替え特例を利用

このように、譲渡所得が出たとしても控除特例を利用すれば税金をゼロにできるため、ほとんどの人は、家を売っても税金(所得税、住民税、復興特別所得税が)はかかりません。なぜなら、家を売却して3,000万円以上の利益(譲渡所得)が非課税になるためです。

 

譲渡所得税の計算方法

家を売却して譲渡所得出ると所得税、住民税、復興特別所得税の支払い義務が発生します。

そこで、譲渡所得の計算方法を詳しく解説します。

譲渡所得の計算は次の式で計算できます。

「譲渡所得=譲渡価格-(取得費用+譲渡費用)」

 

ここでは、「譲渡価格」「取得費用」「譲渡費用」をなるべくシンプルに解説します。

 

家の売却価格が「譲渡価格」

土地・建物の売却で得られる収入金額のことです。

また厳密には「固定資産税の精算金」も譲渡価格に入ります。

不動産に関わる固定資産税は、その不動産の1月1日時点での所有者に請求されるため、売却以降分を売買時に精算します。

 

購入時の費用が「取得費用」

不動産の購入時にかかった費用を取得費といい、譲渡した土地・建物の購入代金や購入手数料にその後の設備費と改良費を加えた合計金額が含まれます。

取得費用に含まれる費用

・購入代金や建築代金
・取得時に支払った仲介手数料
・契約書の印紙税
・登記費用(登録免許税、司法書士への報酬など)
・不動産取得税
・測量費、土地の造成費用など

なお、建物のように時間の経過とともに価値が減少する資産の取得費を算出する場合、価値の減少分を差し引く減価償却という計算が必要です。

 

売った時の費用が「譲渡費用」

譲渡費用とは物件を売るためにかかった費用のことで、次のような費用が含まれます。
・売却時に支払った仲介手数料
・契約時の印紙税
・建物の取り壊し費用
・売却時に支払った立ち退き料(借主がいた場合)

譲渡費用は上記費用の合計で計算できます。以上が譲渡所得の計算に必要な情報です。

 

譲渡所得税の計算

譲渡所得に対して税率をかければ譲渡所得税額を算出できます。

「譲渡所得税=譲渡所得×税率」

 

所有期間によって変わる税率

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら短期譲渡所得となり税率は39.63%です。

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり税率は20.315%です。

・「短期譲渡所得→所有期間5年以下の土地・建物 39.63%(所得税 30% 、住民税 9%、復興所得税 0.63%)」

・「長期譲渡所得→所有期間5年を超える土地・建物 20.315%(所得税 15% 、住民税 5%、復興所得税 0.315%)」

 

例えば、不動産売却で生じた譲渡所得が700万円あった場合、課税される税金は所有期間の違いによって以下のように変わります。

所有期間5年以下

700万円×39.63%=277.7万円(所得税210万円+住民税63万円+復興所得税4.4万円)

所有期間5年超

700万円×20.315%=142.2万円(所得税105万円+復興所得税2.2万円)

 

所有期間は売却した年の1月1日時点が基準

所有期間とは、不動産を取得した日(取得日)から売却した日(売却日)までの期間を指します。

売却した日とは、原則として売主が買主に不動産を引き渡した日です。

ただし、その年の1月1日時点で判定されます。

つまり売却が同じ年の1月でも12月でも1月1日に売却したものとなります。

取得日は原則として不動産の引き渡しを受けた日です。

例えば、2015年4月1日に購入した不動産を2020年4月1日に売却した場合、2020年1月1日時点の所有期間は4年なので短期譲渡所得となります。

所得期間が5年以下だと税率が倍近く変わるので注意して売却時期を見定めるようにしましょう。

 

家売却の税金を控除する対策

家の売却で売却益が出れば税金がかかりますが、一定の条件を満たせば特例が受けられ税金の負担を軽くできます。

税金対策で用いられる特例は主に3つあり、売却益の有無、所有期間の長さによって利用できる特例が変わってきます。

 

【売却益が出た場合】3000万円特例控除

この特例は、戸建てやマンションなどマイホームの売却時に譲渡所得から3000万円まで差し引ける特例です。

この特例を利用すると、譲渡所得にかかる税金は次のような計算式になります。

「税額=(譲渡所得-3000万円)×税率」

したがって、譲渡所得が3000万円以下であれば、所得税と住民税は課税されません。

また、この特例を受けるには次のような条件を満たしておく必要があります。

3000万円特例控除の適用条件

・マイホームに住まなくなってから3年以内に売る
・マイホームを売るまでにその他の土地を活用して利益を得ていない
・売った年から3年前までにこの特例を受けていない
・売り手と買い手が親子などの特別な関係にない事

売却資産の所有期間の長短に関わらず受けられるためほとんどの方が適用可能ですが、一度この特例を受けるとその後2年間は再適用を受けられなくなります。

 

マイホームの買い替えで使える住宅ローン控除

「住宅ローン控除」は、家の買い替え時に使える特例で、正式名称は「住宅借入金等特例控除」といいます。

住宅ローンを利用してマイホームを買った場合、毎年ローン残高の0.7%、最大35万円~21万円(既存住宅は21万円~14万円)までを13年間(既存住宅は10年間)、所得税・住民税から控除できるという制度です。

2022年の税制改正によって変更されています。

この制度の対象になるのは新築住宅だけでなく、中古住宅にも適用されます。

この控除は3,000万円特例控除との併用ができないため、どちらを利用したほうがより有利になるのか、状況に応じて判断する必要があります。

 

所有期間による軽減税率

所有期間が10年を超えるマイホームを売却した際には、軽減税率が適用され、長期譲渡所得の税額より低い税率で譲渡所得を計算することができます。

この制度を利用した場合の税率は、次のようになります。

課税譲渡所得金額  税率

6,000万円以下の部分→14%(所得税10%+住民税4%)
6,000万円超の部分→20%(所得税15%+住民税5%)

また、この特例は3,000万円特例控除との併用が可能です。

したがって、3,000万円の特例控除の特例を適用しても課税譲渡所得がある場合には、この特例を適用することで、さらに節税することができます。

適用条件は3,000万円特例控除と同じですが、売却した年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えている必要があるので注意してください。

また、前年、前々年にこの特例を受けていないことも条件になります。

 

以上が主に利用できる税金控除制度です。

 

家売却で生じる税金への注意点

取得費用が不明時の税金計算方法

相続した家を売るとき、親が家をいくらで購入したか分からない場合があるでしょう。

当時の売買契約書が残っていれば良いのですが、紛失していたら相続した家の取得費が分かりません。

このように売却物件の取得費が不明な場合は、売却額の5%を取得費にして計算します。

 

例えば、相続した家を3000万円で売却すると取得費は150万円となります。

 

新居購入時の住宅ローン減税と売却時の特例は併用できない

以下の特例住宅は住宅ローン控除と併用ができません。
・3,000万円の特例控除
・所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例(軽減税率の特例)
・特定の居住用財産の買換え特例

正確にいうと、購入物件に入居した年から前々年あるいは翌々年までに3,000万円特例控除を適用すると、住宅ローン控除は利用できなくなります。

一般的には、住宅ローン控除の方が上記の特例よりも節税額は大きくなることが多いです。

確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日までの1カ月ほどの間ですが、直前になって必要な書類が足りない状況になると、申告期限に間に合わないという事が発生しかねません。必要な書類を前もって準備しておきましょう。

また、所得税は2月17日~3月16日の期間中に金融機関や税務署の窓口納付、住民税は、基本的に申告した年の5月以降に市区町村から納付書が送られてきます。まとめて納税するか年4回に分けて納税しましょう。

 

売却損が出た場合は税金が戻る

マイホームを売ると赤字になる(購入した金額より売却した金額の方が少ない)こともあります。

こうしたケースを救済するのが、「居住用不動産の譲渡損失の損益通算」です。

損益通算とは、ある所得で損失が出たとき、他の所得からその損失分を差し引くことです。

その分課税される所得が抑えられ、税金を少なくできます。

この特例の適応対象となる居住用財産は、個人が有する土地や建物でその年の1月1日における所有期間が5年を超え、さらに次の条件に合致する必要があります。

軽減税率の適用条件

・売却相手が配偶者や直径の親族ではない
・その年の所得が3000万円以下
・売却した年の前々年までに他の特例を利用していない
・売却する物件に10年以上の住宅ローンが残っている など

さらに、その年の所得から引ききれなかった損失金額があれば、翌年以降に繰り越して最長3年間差し引くことができます。

例えば、5000万円で売却した不動産の取得費が7000万円、譲渡費用が100万円かかっていた場合には2100万円の損失ですが、この特例の利用すれば給与所得(例では400万円とする)など、他の所得と損益通算できます。

譲渡損失 5000万円-(7000万円+100万円)=-2100万円
損益通算 400万円(給与所得)-2100万円=-1700万円

上記例では、給与所得を相殺してもなお1700万円の損失が残っているため、翌年以降3年間繰越控除できます。

2022年に売却し、給与所得400万円が続くと仮定すると、2022年で譲渡損失が残り1700万円、2023年で1300万円、2024年900万円、2025年に残り500万円となって控除の年数が終了します。

損益通算 譲渡損失

2022年 400万円(給与所得)-2100万円 -1700万円
2023年 400万円(給与所得)-1700万円 -1300万円
2024年 400万円(給与所得)-1300万円 -900万円
2025年 400万円(給与所得)-900万円 -500万円

この特例の適応対象となる居住用財産は、個人が有する土地や建物でその年の1月1日における所有期間が5年を超え、さらに次の条件に合致する必要があります。

・軽減税率の適用条件・売却相手が配偶者や直径の親族ではない
・その年の所得が3000万円以下
・売却した年の前々年までに他の特例を利用していない
・売却する物件に10年以上の住宅ローンが残っている など

 

最後に

今回は、居住用土地建物の売却による譲渡所得税にはいろいろ優遇税制があることをご説明いたしました。

但し、この各種規定を適用する為には要件に該当しているか、添付書類はそろっているかなど確認すべきことが多々あります。

現在、居住用土地建物の売却をご検討の場合は、弊社までご相談下さい。

 

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