個人事業者の届出書の一括化・簡素化
2023年(令和5年)税制改正で、個人事業者がその事業を開始し、又は廃止した場合に行う届出書等の提出を一括で行えるよう、見直しが行われました。
個人で事業を開始した際には税務署に開業届を提出する必要があります。
開業届の他にも開業時に提出しておくべき届出がいくつかありますが、大綱ではこれらの届出書の内容を簡素化することが記載されています。
開業等の届出書の提出期限
個人事業者がその事業を開始し、又は廃止した場合に行う届出書等の提出を一括で行えるよう、以下の見直しが行われる見込みです。
① 個人事業の開業・廃業等届出書について、その提出期限をその事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限とするとともに、事務所等を移転する場合のその提出先を納税地の所轄税務署長とするほか、記載事項の簡素化を行う。
② 青色申告書による申告をやめる旨の届出書について、その提出期限をその申告をやめようとする年分の確定申告期限とするとともに、記載事項の簡素化を行う。
③ 次に掲げる届出書等について、記載事項の簡素化を行う。
イ 納期の特例に関する承認の申請書
ロ 青色申告承認申請書及び青色専従者給与に関する届出書
ハ 給与等の支払をする事務所の開設等の届出書
(注)
①の改正は令和9年1月1日以後の事業の開始等について
②の改正は令和8年分以後の所得税について
③イの改正は令和9年1月分以後の承認申請について
③ロの改正は令和9年分以後の所得税について
③ハの改正は令和9年1月1日以後の事務所の開設等について
それぞれ適用する。
開業届の提出期限が開業2ヶ月以内で、確定申告書の提出期限が翌年3月15日であったため、別々に提出する必要がありますが、今回の改正により提出時期の一括が可能となりそうです。
また記載事項の簡素化により複数届出書の統合など、届出書の一括化が期待できます。
なお、開業の届出書と同時に提出することが多い青色申告承認申請書の提出期限については大綱では触れられていないので、現行どおり事業開始から2月以内に提出する必要があるため、注意が必要です。
給与所得者の届出書の簡略化・デジタル化促進
開業後、従業員を雇用すると給与関係の書類の提出を受けて保管し、又は書類を作成して交付する必要があります。
代表的なものが次の3つで、それぞれ変更が予定されています。
・扶養控除等申告書
・保険料控除申告書
・源泉徴収票
各帳票ごとに検討されている変更事項などをお伝えします。
(1)扶養控除等申告書
【変更事項】
その申告書に記載すべき事項がその年の前年の申告内容と異動がない場合には、その記載すべき事項の記載に代えて、その異動がない旨の記載によることができることとする。
(注)令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出する申告書について適用する。
今までは扶養家族の情報を毎年記入する必要がありましたが、今後は無くなりそうです。
(2)保険料控除申告書
【変更事項】
次に掲げる事項の記載を要しないこととする。
① 申告者が生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合のこれらの者の申告者との続柄
② 生命保険料控除の対象となる支払保険料等に係る保険金等の受取人の申告者との続柄
(注)令和6年10月1日以後に提出する申告書について適用する。
他にも控除額計算に影響がなく記載不要とできそうな箇所がありますが、今回の改正では続柄欄に限られるようです。
(3)源泉徴収票
交付方法の変更推進(デジタル化促進)です。
【変更事項】
給与所得の源泉徴収票又は給与支払明細書の交付に代えてその源泉徴収票又は給与支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供するための要件であるその支払を受ける者の承諾手続に、その支払を受ける者に対し期限を定めてその承諾を求め、その支払を受ける者がその期限までにこれを拒否する旨の回答をしない場合には、その支払をする者はその承諾を得たものとみなす方法を加える。
簡単にまとめると次の内容となります。
源泉徴収票のデジタル交付
今まで : 了承した人のみ
これから : 了承した人+期限内に拒否しなかった人
(期限内に拒否した人を除いた全ての人)
電磁的方法による提供(デジタル交付)とは、例えば専用のWebページにアクセスし、各自がダウンロードして帳票を取得するなどの方法です。
デジタル交付により受渡や再発行の手間、受渡漏れや紛失のリスクを低減できるため、今後はこの方法が主流になっていくと予測しています。
最後に
令和5年税制改正大綱において簡素化・簡略化が予定されている届出などを記載しました。
他の届出にもこのような取り組みが拡大することを期待します。
但し、途中でも触れましたが、「青色申告書承認申請書」の個人事業者の提出期限は変更されませんので、提出期限はその年3月15日のままです(その年1月16日以後新たに業務を開始した場合には、その業務を開始した日から2月以内です)。青色申告制度は種々の特典のある制度ですので、提出漏れの無いように注意が必要です。
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