2023年10月 お酒の税率が変更されます

はじめに

2023年10月に酒税の改定が実施されます。

特にビール、発泡酒、新ジャンルの「ビール系飲料の値段が変わるのでは?」と注目を集めています。

今回は、目前に迫った酒税の改定内容を中心に、酒税法改正の歴史や背景、今後の動向などをご説明致します。

 

酒税法改正に伴う2023年10月の酒税変更とは

酒税法とは、お酒の分類・製造・販売の免許・酒税の税率・徴収などを定めた法律です。

明治以降、大きな財源となり、古くから国の重要な財源のひとつでした。

酒税法の対象は、原則としてアルコール分1度以上の「酒類」です。

酒類は製法などの違いから4種類に分類され、下記の通り品目ごとに異なる税率が適用されています。


※出典:財務省「酒税に関する資料」
 現在注目されている2023年10月の酒税変更は、2017年の酒税法改正に基づき実施されます。

 

ビールの税率は2026年に一本化へ

この法改正は、2026年10月までに、複雑に分類されてきた酒税を段階的に簡素化する観点から行われました。

2023年10月に実施される改正内容は、2020年10月に続く2回目のビール系飲料の税率変更です。

2020年の酒税法改正には、似た特性をもつお酒に対して公平な税率を適用する狙いがありました。

 

たとえばビール系飲料は、原料や製法の違いによって、ビール、発泡酒、新ジャンルの3種類に分かれています。

ビールと似た見た目や味わいをもつビール系飲料は、税率の分類が複雑です。

麦芽比率50%以上の発泡酒・麦芽比率25~50%未満の発泡酒・麦芽比率25%未満の発泡酒と、税率は3種類にも分かれています。

しかし、2020年、2023年の税率変更を経て、2026年にはビール系飲料は税額54.25円(350mlあたり)に一本化される予定です。

税額を350mlあたりで換算すると、ビール系飲料の酒税はビールが70円から63.35円へ引き下げ、麦芽比率25%未満の発泡酒が46.99円のまま据え置き、新ジャンル(第3のビール)が37.8円から46.99円へ引き上げになります。

 

同時期に、清酒や果実酒などのワインや、日本酒に当たる醸造酒類の税率も一本化されます。

チューハイなどその他の発泡性酒類においても、2026年10月に引き上げを予定しています。

これにより税制の簡素化が向上し、消費者や業界にとってもよりわかりやすくなることが期待されています。

 

 

酒税法改正の歴史と背景

日本の酒税には、長い歴史があります。

室町時代から現在まで、酒税は国を動かす財源として重要視されてきました。しかし、酒税法を制定する目的は、過去と現在では異なります。

 

室町時代や鎌倉時代、政府はお酒を飲みすぎて民衆が堕落するのではないかと不安視していました。

そのため、当初は販売禁止令を出していましたが、税収への期待から壺銭などの酒税が開始された背景があります。

しかし明治時代に入ると、軍事費増強へと酒税法の目的が変わり、1878年には現在と同様の「酒類に応じて税率が変動する」仕組みへ改正されました。

戦争が続いて酒蔵の作り手が減り、生産量が減ってしまうと、税収減を補うための酒税の税率アップも行われました。

 

その後、酒税法が全文改正され、現在の酒税法が制定されたのは1953年です。

その後、1989年の法改正では、ウィスキーなど高価格な物品に対する従価税と級別制度が廃止されました。

この廃止により貴金属など多くの高級品は減税に向かいましたが、お酒は高級品とみなされたまま高い税率を維持されます。

2006年に10種類に分かれていた酒類が現行の4種類になるなど、近年は酒税法の簡素化が進んでいます。

 

酒税法改正の目的

2023年の酒税法改正は、酒税制度の公平性の確保を目指す重要な取り組みです。

日本の酒類市場の発展と、消費者の利益を考慮した税制の構築を目的としています。

そこで、わかりやすく公平な酒税を観点とした法改正により、国は酒税の一本化を進めている状況です。

 

酒税は、酒類の製造や販売に課せられる税金であり、国や地方自治体の財源の一部です。

酒類の消費を調節する役割も担っており、健康や社会的な問題への配慮も考慮されています。

日本の酒類販売数は1996年をピークに減少傾向です。

理由としては、若い世代の酒離れのほか、複雑な税率による商品開発などの影響だと指摘されています。

背景には、ビールと似た飲料が多様化し、税率の分類が複雑になったことも挙げられます。

税率の差異が商品の選択や市場の健全な競争に影響を与える可能性があるため、より明確な税制の確立が必要です。

 

飲食店でも税率変更への対応が必要な可能性

酒税の税率変更の影響は、メーカーや消費者だけではなく、お酒を扱う飲食店にも及ぶ可能性があります。

酒税はメーカーの販売時あるいは輸入時に課税されます。

飲食店は通常、酒税を申告する義務はありませんが、税率が変更されるタイミングだけは例外的に「酒類の手持品課税(戻し税)」が実施されるため注意が必要です。

 

2023年の税率変更の場合、改正時点で在庫のあるお酒に対して、税率を引き上げられた酒類には課税が生じ、引き下げられた酒税には還付が行われます。

ただし、1,800ℓ以上のお酒を保有する飲食店が対象なので、個人店の多くは申告しなくても済むでしょう。

申告する場合は10月31日が期限ですので、早めに確認しておくと安心です。

 

おわりに

2023年10月より、ビールの値段は下がり、発泡酒の酒税はそのまま、そして第3のビールの酒税は上がることになります。

これにより、これからのビール系飲料の選び方は「安いから」ではなく「おいしいから」選ぶに変化するかもしれません。

 

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