国は、社会福祉法人に大規模化協同化を進めるように政策を進めてきています。
事実、社会福祉法人の90%が事業高(売上高)10億円未満、また社会福祉法人全体では平均5億程度の事業高となっており、
非常に事業規模の小さい社会福祉法人が多く存在します。
設立の経緯から考えても、個人財産などで開始するケースが多く、1法人1施設が多いことが要因です。
「社会福祉法人の現況報告書等の集約結果」より
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/zaihyou/zaihyoupub/aggregate_results.html
一方で、経営から考えると、それだけ理事や評議員の数が必要となります。
また、事業規模が小さいとどうしてもお金のやりくりが難しくなり、経営が安定しないケースが存在します。
従来はそれを補う形で、社会保障費を上乗せしていたので、経営は成り立ちましたし、役員への報酬も払うことが可能でした。
しかしながら、現在は違います。
国はお金がなく社会保障費を削減する方向に進めており(高齢者が自然増するので、単価を下げても総額は爆発的に増えている状況)、
間接コストを抱えきれない法人が多く発生してきています。
本年に入り、2件目の社会福祉法人のM&Aの案件に携わります。
社会福祉法人のM&Aの一番大変な点は、これまで働いてきた理事長などの経営陣に功労金を払うことができない点もあるのではないかと感じます。
株式会社であれば、利益がたまっているとその分株価が高くなっていくので、株式を買い取る・売却する際にそれまでの功績を支払うことができます。
一方で、持分(株式)のない社会福祉法人の場合、いくらお金がたまっていたからといって、その功績に対してお金を支払うことができないのです。
多くの場合はそれなら退職金で支払えばいい。という考えになりますが、社会福祉法人を経営している多くの経営者は社会の公共性のために
私財を投じて事業を開始しているケースが多く、かつ不必要な役員報酬はとっていないケースが多いです。
そのため、役員退職金の計算上、退職金の支払える金額も少なくなってしまいます。
個人的には、せめて投じた私財や利益の一部程度は支払っていいのではないかと感じてしまいます。
支払えるとしたうえで、受け取るかどうかについては、経営陣が選択できるようにしてあげないと、
辞めるに辞められない経営者が多くなり、結果として事業継続に影響を与えてしまうように感じます。
会計手法の現在検討が進み、マニュアル等が出ています。
社会福祉法人の「合併・事業譲渡等マニュアル」について(周知依頼)
非営利法人としての役割とそれを永続させる方法についてもよくよく検討が必要ではないかと感じます。
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